※タイトルはUber Eatsとしていますが、Woltや出前館など、ほぼすべてのフードデリバリーに共通します。
結論:これ以下なら“赤字配達”の可能性大
2025年1月〜7月の札幌での稼働データを分析した結果、1件あたり464.5円以下、または264円以下の注文を受け続けると、生活や事業が赤字に転落することがわかりました。
この金額を下回る案件は、配達するほど手元に残らない“危険ゾーン”です。
理由:数字が示す損益分岐ライン
これは単なる感覚ではなく、2025年1月1日〜7月31日の稼働データに基づく数値です。
稼働データ概要
総配達件数:5,735件
売上:3,063,821円
経費:636,924円
税金・社会保険料:877,217円(前年の支払額から7か月分を算出)
生活費:1,149,590円(家賃70,000円で計算)
純利益:400,090円
売上の平均値:437,689円/月
平均時給:約1,445円(1日平均10時間稼働として計算)
※生活費は家賃を70,000円で計算。実家住まいの方や家賃が安い方は、その分ラインが下がります。
① 生活費込みの赤字ライン(464.5円)
計算式:
(経費 636,924円 + 税金・社会保険料 877,217円 + 生活費 1,149,590円) ÷ 5,735件
結果:1件あたり464.5円
- 1か月売上目安:380,533円
- 1時間あたり:1,268円
このラインを下回ると、家賃や食費を削らないと生活が維持できません。
言い換えれば、「生きるためだけに働く」水準です。
② 生活費を含めない事業赤字ライン(264.0円)
計算式:
(経費 636,924円 + 税金・社会保険料 877,217円) ÷ 5,735件
結果:1件あたり264.0円
- 1か月売上目安:216,305円
- 1時間あたり:721円
このラインを下回ると、経費・税金・保険料を支払った時点で利益がゼロ。
生活費をまったくカバーできないため、長期的には借金が増える状態です。
かつてのWolt最低報酬230円は、「事業赤字ライン」を完全に下回っていました。
札幌で実感した“割に合わない”案件パターン
赤字ラインに近づきやすくなる「割に合わない案件」を、札幌での実体験から紹介します。
数字上の損益分岐を知っていても、現場でこうした案件を繰り返し受けてしまうと、結果的に時給・日給が大きく下がります。
札幌の例ですが、他のエリアでも共通する部分が多いと思います。
すでに慣れている方には見慣れた内容かもしれませんが、これから始める方にはきっと参考になると思います。
朝の中央区行き・夕方の中央区→郊外行き
【理由】
通勤・退勤の交通量がピークを迎える時間帯は渋滞が多く、配達効率が大幅に低下します。
以前は遅延補正(調整金)が多少ありましたが、現在はほぼ無いため時間単価が著しく下がるのが実情です。
【実例】
・朝8時台に中央区へ向かう注文で、片道4kmの配達が渋滞で25分以上かかりました。
→ その結果、その時間帯の時給は1,000円を切る水準に。
・夕方17〜18時台に中央区から東区や手稲区へ向かう配達では、帰路も含めて1時間近く拘束。
→ 次の注文を受けられず、売上が大幅に落ち込みました。
【対策】
・渋滞道路を使用する注文はできるだけ避けるのが安全策です。
・受諾率を下げたくない場合は、別アプリを稼働させてバランスを取るのも有効です。
待ち時間が長い店舗
【理由】
ピークタイムに20分以上待たされると、その間に1件配達できる機会を失います。
単価が高めでも、結果的に時給換算で損をすることにつながります。
【実例】
・あるゴーストレストランでは夕方に毎回15〜20分待ち。
→ 同じ時間で近隣のファストフード2件をこなした方が売上が安定しました。
・新規出店直後の飲食店はオペレーションが未熟で、待ち時間が長くなる傾向がありました。
【対策】
同業配達員と情報交換し、待ち時間が長い店舗を避けるのがおすすめです。
集荷に手間がかかる案件(大規模商業施設など)
【理由】
駐車場が遠い・警備室で受付が必要・館内移動が長いなど、受け取りまでの時間ロスが大きいです。
【実例】
・某デパート地下1階の店舗で、駐車場から往復15分かかる上に、受付手続きでさらに5分。
配達時間よりピックアップ時間の方が長くなり、時給は半減しました。
【対策】
初めて行く施設はピークタイムを避け、事前にフロアマップなどで最短ルートを把握すると効率が上がります。
駐車違反リスクの高いエリア
【理由】
罰金12,000〜18,000円+減点があり、1日の売上が吹き飛びます。
特に札幌中央区は、晴天・8時〜18時が最も厳しく、巡回が多いです。
【実例】
・狸小路周辺で数分の受け渡し中に違反切符を切られ、売上14,000円の日がマイナスに。
・巡回中の職員から「車から1歩でも離れたら放置車両扱い」「停車標識のある場所も違反」と言われたことがあります。
【対策】
札幌市中央区の場合は、有料駐車場以外に停めた場合のほとんどが違反に該当すると考えるのが安全です。
取締巡回の厳しいエリア・時間帯は避けるのがおすすめです。
夜の「すすきの」
【理由】
「すすきの」は札幌市でも有名な飲食店街で、夜になるとお酒を飲んだお客さまで賑わいます。
その分、チップが多めにもらえることもありますが、同時にトラブルのリスクも高まる場所です。
具体的には、酔って住所を間違えて入力するケースや、時間に遅れただけでクレームにつながるケース、さらには店舗スタッフや利用客との思わぬトラブルなども起こりやすいのが実情です。
【実例】
・到着後に「そこじゃなかった」と修正され、サポートへ連絡後に再配達先へ。
インターホンで置き配するように指示され、なぜかバッド評価がつきました。
・とあるカクテルバーへの配達でした。
現金の受け渡しをしている途中に、お客さまの知人が「これ頼んだものと違う」。
レシートを確認するとアプリの注文画面とは合っているため、店員さんが間違えてしまったようでした。
怒っているお客さまの知人になんとか説明し、同時にサポートへ報告。返金で納得してもらいました。
こうした場面は、時間のロスだけでなく精神的なストレスも大きいです。
【対策】
特に夜のすすきのでは、対面での受け渡しが必要な現金配達はリスクが増します。
酔っている方に理屈は通じないことも多いため、現金払いの注文を受けない設定にするのが安心です。
慣れていないエリア
【理由】
慣れていないエリアでは、どうしても交通違反のリスクが高くなります。
特に札幌では、時間帯進入禁止の通学路、右折禁止の交差点、踏切付近での一時停止など、土地勘がないと見落としやすい規制が多いです。
実際、そうした場所で取り締まりに遭っている車をよく見かけます。とくに札幌市西区は警察の取り締まりが厳しく、初めての人が間違えやすいポイントに張り込んでいることが多い印象です。
違反をしてしまうと、罰金はもちろん、切符を切られる間の時間ロスも発生します。その結果、1日の売上が吹き飛んでしまい「割に合わない配達」になってしまうのです。
【実例】
・通学路の時間帯規制
ある昼過ぎ、コンビニの駐車場から出ようとしたところ、少し前方で車が取り締まりを受けていました。
嫌な予感がしてバックで戻り、後から確認すると 駐車場からは死角になる位置に「時間帯進入禁止」の標識が…。
朝や昼過ぎは時間帯規制が多く、初心者が一番引っかかりやすいパターンです。
・西区での取り締まり
駅に近い、人や自転車の往来が多い交差点に「時間帯右折禁止」が設定されている場所があります。
標識自体は見やすい位置にあるのですが、道に迷って注意が散ったり、歩行者や自転車に気を取られて見落としてしまうケースが多いです。
結果としてよく車が捕まっており、警察もそれをよく理解していて、その交差点を周回して張り込んでいます。
【対策】
地元の人に聞いてみる
店舗店員さんや集荷待ちしている配達員がいたら、挨拶ついでに「この辺って取り締まり多いですか?」と聞くと、意外と親切に教えてくれることもあります。
エリアを少しずつ広げる
最初から未知のエリアに飛び込むのではなく、普段稼働している地域の周辺から少しずつ広げると、規制や道路の特徴を把握しやすくなります。
“割に合わない”案件パターン考察
改めてみると、「慣れていないエリア」は稼ぎの幅を広げられる可能性がある一方で、交通違反のリスクや効率の低下につながる、まさに両刃の剣だと感じます。
もちろん、新しいエリアに挑戦することでチャンスが増える場面もありますが、思わぬ落とし穴もあるのが現実です。
そのため、自分の経験値や稼働スタイルに照らし合わせて、「今は挑戦するべきかどうか」を冷静に判断するのが安心かもしれません。
特に初心者のうちは、慣れたエリアで効率よく稼ぐことを優先し、少しずつ新しい地域に挑戦していくのが無理のない方法だと思います。
ポイント:赤字回避の3つの視点
1. 注文額だけで判断しない
報酬金額が高くても、移動距離・時間・待ち時間・交通違反リスクを加味すると割に合わない場合があります。
「金額」だけではなく、総合的に見て判断することが大切です。
2. エリア特性を理解する
札幌の場合、中央区やすすきのなどは時間帯や天候によって効率が大きく変動します。
自分のエリアでも、「ここは昼は効率的、夜は非効率」などの特徴をつかんでおくと、赤字を避けやすくなります。
3. 「全部受ける」から「選んで受ける」へ
短期的には件数が増えますが、長期的には時間単価・心身の負担・トラブル回避につながります。
効率を意識して注文を選ぶことが、安定して稼ぐための一番の近道です。
👉 こうして3つの視点を持って動くだけで、同じ件数をこなしても手元に残るお金は大きく変わります。
「なんとなく受ける」から「数字と経験で選ぶ」へ切り替えてみてください。
まとめ
Uber EatsやWolt、出前館で安定して稼ぐには、「自分の赤字ラインを知る」ことが第一歩です。
1件あたりの報酬だけを見て判断するのではなく、移動時間や待機リスク、違反リスクまで含めて計算し、注文を選ぶことが大切です。
私自身の札幌での稼働データからも分かるように、数字を把握して「選択と集中」で動くだけで、同じ件数を配達しても手元に残る金額は大きく変わります。
数字に基づいた判断は、初心者にとってもベテランにとっても、長くフードデリバリーで活動していくための安心材料になります。
「全部受ける」から「選んで受ける」へ。
これを意識するだけで、収益面でも精神的にもずっと楽になるはずです。